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Japanese Interview

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紛争解決の心理学 コメンタリー:141

記事のウェブ化の許可ありがとうございます。ウェブで読みやすいように空行が足されています。

明日はどっちだ!~紛争解決の心理学 コメンタリー:141

 

対立や衝突を感じ取り、怖さを共有する。 他者の痛みや葛藤を理解できるようになる。

世界の紛争地域に入り、現地の様々な立場の人々と共に集団討論をする「ワールドワーク」を70年代末から行っています。これまで、イスラエルやアイルランド、ロシア、アフリカ、オーストリアなど30カ国以上を訪れました。
討論は、互いの偏見を批判し、戦うためのものではありません。すべての立場の声を聞くことで、一人ひとりの自覚を高め、その対立や衝突の炎の熱を活用してコミュニティーを作るのが目的です。

最近、イスラエル人とパレスチナ人の集まりに参加しました。最初はパレスチナ人が口々に自分の土地に帰れない怒りや痛み、無視され続ける悲しみを話し、なぜ暴力に訴えなければならないかを話していました。
その時、ひとりのイスラエル人女性が話し始めました。彼女は苦しんでいて、自分たちの土地がなく、追い出されることを怖れていました。彼女に、その苦しみをもっと表現してもらおうとしましたが、できませんでした。そこで私は、その苦しみや歴史そのものが、実はあなたではなく「敵」でもない、文化を無意識のうちに支配する「亡霊」的なものなのではないかと思い、こう言いました。
「ユダヤの歴史そのもの、強制収容所やガス室のこと、そこで殺されそうになったことを思ってみて下さい。いまあなたが感じている怖れやパニックは、そういう歴史的な体験を味わい、言葉にし、理解し尽くしていないから起こるのではないか」と。

実は人類はほとんど誰も、第2次大戦の心理的な結果について、深く理解してはいないのです。
「あなたは自分が歴史の被害者だと感じているかもしれないし、実際に被害者なのだが、自分の痛みにとらわれるあまり、望んでもいないのに誰かを直接あるいは間接的に苦しめているかもしれない」
そう話すと、イスラエル人女性は泣き出しました。そして、抑圧された歴史は私たちに共通の体験だったのだと、自分でも思ってもみなかったような感情を出し始めました。しばらくパレスチナとイスラエルの戦いはやんで、両者がお互いの話を聞き始めました。

一瞬に過ぎませんが、こういう瞬間はめったに起こるものではなく、政治的状況の中では大事なことです。このように衝突を避けずに、その対立の炎の中に深くとどまることなくして、政治は機能しないのです。
20世紀の戦争によって、すべての人類は他者を怖がるようになってしまいました。私たちはみな「外国人嫌い」です。中東やインドやアフリカなどの紛争の話を読むと、いかに自分たちが戦争の被害を受けたか、両親や祖父母たちが虐げられてきたかを思い出し、時には他者を苦しめることにならざるを得ないと思うこともあります。けれども本来、衝突や対立を深く感じ取り、痛みを思い出すことで、私たちはよりオープンになり、他者の痛みや葛藤をより理解するようになるのです。

「テロリスト」と呼ばれる人たちともワークをしました。彼らが言うことは、みなよく似ています。
「夢に捧げられない人生なんて意味がない。復讐心や憎悪は確かにあるが、私たちは自分たちの同胞を未来のために守っているのだ」と。私たちは、彼らを「自由のために戦う人々」として理解し、その行動の狂気の部分だけではなく、意味を解読しようとします。
彼らに他者の苦痛を理解させようとしても意味はありません。そういう理解は、社会的に平等な力を持つ集団の間にしか存在できないからです。権力を持つ人は、自分がいつどのように他を抑圧したか、気づいていません。自らの力に無自覚である時、力は有害で抑圧的になります。「主流派」は、常に自らの力に気づきにくいのです。

私は心理学者の妻エイミーと共に世界を回っています。
その土地に入る前には、そこで起きている対立や衝突が自分の問題であると感じられるまで、二人で話をします。
先日訪ねたインドでは、最初とても怖かった。イスラム教とヒンドゥー教が対立する地域での暴力を怖れていたのです。そこで討論の前に、それぞれの立場に共感できるまで、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒になりきってみました。そのうちに、怖いのは攻撃者と犠牲者が「あちら側」にいて、自分の一部ではないと考えていたからだとわかりました。

こういう内省やパートナーシップがすべての問題を解決するわけではありません。私たちはただ勇気を持って紛争に向き合い、自分が怖いと思う気持ちを当事者と共有するようにしています。
内的な自己と人間関係、そして世界はつながっています。身の回りの一つひとつの小さな局面が重要です。日常生活にとって内面の問題は重大ですが、毎日が緊張と戦争に支配されている人たちには、内面の問題解決だけでは十分ではありません。

紛争地域にいないという特権を持つ私たちは、心理学などを通して自分自身に耳を傾け、自分が持っている力や特権を自覚したら、その場において、つまり自分がいる集団や社会に対して、自分ができると感じることを行動に移していかなくてはなりません。やがてそれが必ず、世界に影響を与えていくのです。

(聞き手・編集部 福山栄子)

<profile>
アーノルド・ミンデル Arnold Mindell 心理学者・物理学者
1940年生まれ。マサチューセッツ工科大学大学院修士課程修了(理論物理学)、ユニオン大学大学院ph.D(臨床心理学)。プロセス指向心理学創始者。ユング派分析家。著書に『うしろ向きに馬に乗る』『ドリームボディ』『紛争の心理学』『昏睡状態の人と対話する』など。
※日本プロセスワーク協会 http://isweb42.infoseek.co.jp/art/pw-jp/

2002年06月17日 074ページ アエラ(朝日新聞社)より